アルミニウムの表面処理
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アルミニウムへの様々な表面処理


アルミニウムの化成処理

▼化成処理皮膜の色調(図.1)
▼黄金色の化成処理皮膜
▼乳白色の化成処理皮膜
 電解をせずに、化学的にアルミニウム表面に酸化皮膜を生成させる表面処理を、アルミニウムの化成処理と言います。
 アルミニウムの化成処理方法は、ベーマイト法、MBV法、りん酸塩法など様々ありますが、当社ではクロメート法を採用しております。
 俗にアロジン若しくはイリダイトと呼ばれるクロメート処理法による化成皮膜の色調は、黄金色と乳白色の二種類です(図。1参照)

 化成処理で得られる酸化皮膜は、推定0.1〜0.3ミクロンと薄く、陽極酸化皮膜と比較すると、耐食性、耐摩耗性は劣ります。
 しかし、陽極酸化処理のように、電解する必要がないうえに化成処理の工程も短時間で済むので、その作業性の良さから、陽極酸化と比較すると処理コストが低いという長所があります。
 また、アルミニウム素地の外観を生かした黄金色、乳白色の酸化皮膜の色調は、ある種の装飾性も備えていると言えます。
 以上のような特色を備えたアルミニウムの化成処理は、陽極酸化皮膜ほどの耐食性や耐摩耗性を必要としない製品の保護皮膜として、また、化成皮膜と素地との密着性も良いことから、塗装の下地処理として、広く利用されています。


化学研磨と電解研磨

▼化学/電解研磨の色調(図.2)
▼化学研磨
▼電解研磨
 金属表面の微細な凹凸の凸部を凹部よりも先に溶解させ、平滑な光沢面を得る方法を、化学研磨及び電解研磨と言います。
 研磨液に浸せきする事により化学的に金属表面を研磨する方法が化学研磨、研磨液に浸せきし陽極で電解をする事により金属表面を研磨する方法が電解研磨です(図.2参照)
 適応素材としては、ステンレス鋼やアルミニウム(合金)等で、銅や鉄は効果がなく、不適応とされます。
 ステンレス鋼の場合は、仕上げ処理として化学研磨及び電解研磨をする事ができますが、アルミニウムの場合は、耐食性に難があるため、通常、陽極酸化の前処理として行います。
 バフ研磨などの機械的研磨法では、複雑な形状のものに対しては、応用不可能な場合が多いですが、化学研磨は、研磨液が被研磨面に接する部分ならば、複雑な形状の品物でも研磨が可能です。
 ただし、微細な凹凸は平滑化されますが、深い凹凸や条痕は、化学/電解研磨では除去することができないので、より緻密な光沢面を必要とする場合は、機械的研磨と併用すると最良です。
 また、サンドブラストなどで物理的にアルミニウム表面を荒らした後、化学/電解研磨を施すと、光沢のある梨地面を得る事ができます。
   短所としては、アルミニウム表面が溶解することにより光沢面となるため、被研磨物の寸法精度に誤差が生じる事の他に、電解研磨では、電流密度の違いから光沢にムラがでる場合があるということです。

つや消しと化学梨地

▼表面粗化(図.3)
▼サンドブラスト
▼つや消し処理
▼化学梨地
 アルミニウムの表面を粗(あら)し、光の反射を防ぎます。
 鉄やガラスなどの微粒子を圧縮した空気とともに噴射し、物理的に表面を粗化する方法を、サンドブラストと言います(図.3上段参照)
 アルミニウムには、陽極酸化の前処理として、また、塗装の下地として、広く利用されています。
 サンドブラストは、鉄、真鍮などの素材にも応用可能ですが、アルミニウムは、両性金属であり、酸だけではなくアルカリにも激しく反応するため、その性質を利用して、化学的に表面を粗すことができます。
 化学的にアルミニウム表面を荒らす方法は、耐食性の問題があるため、仕上げ処理としてではなく、通常、陽極酸化の前処理として行います。

 水酸化ナトリウム溶液に比較的長い時間浸せきすることにより、表面を粗(あら)して光の反射率を減少させる方法を、つや消し処理と言います(図.3中段参照)
 溶液に浸せきするだけなので、機械的に表面を荒らすよりも、作業性は良好です。
 ただし、アルミニウム合金の種類によって、荒れ具合が異なり、光沢が変わるという短所があります。
 また、水酸化ナトリウム溶液により溶解されるため、素材寸法が著しく減るので、寸法精度の厳しい製品に対しては、不向きな処理方法と言えます。

 特定の溶液中に浸せきして、化学的に梨地面を付与させる方法を、化学梨地仕上げといいます(図.3下段参照)
 つや消し処理よりも表面の凹凸が際立っており、機械的な梨地面とほぼ同じような仕上がり具合になるので、アルマイトの梨地仕上げには広く利用されています。
 つや消し処理と同様、溶液に浸せきするだけなので、作業性は良好ですが、やはり、アルミニウム合金の種類によって、荒れ具合と発色が変わり、また、処理によって素材寸法が減るという短所があります。


アルミニウムへのめっき

▼アルミニウムへのめっき(図.4)
▼LD(防錆黒色導電薄皮膜)処理
▼硬質クロムめっき
▼無電解ニッケル
 アルミニウムは、空気中の酸素と反応し、表面に薄い酸化皮膜を生成するので、そのままの状態ではアルミニウムに密着性の良いめっき皮膜をのせる事はできません。
 前処理として、亜鉛置換めっきを施し、導通性を良好な状態にしてから、各めっき工程へと移ります。
 当社すべてのめっき処理をアルミニウム上に施すことは可能ですが、電気的特性、機械的特性、装飾性に優れた下記の三種類のめっき処理を承ることが多い傾向にあります。  

LD処理(防錆黒色導電薄皮膜)

 仕上がりの色調は、艶のない黒色です(図.4上段参照)
 LD処理で得られる黒色皮膜は1〜2ミクロンと非常に薄く、アルミニウムへ直にLD処理をした皮膜は、黒アルマイトと比べると耐摩耗性の点で劣ります(下地に硬質クロムをつけ、LD処理を施し、耐摩耗性を向上させる事もできます)。
 また、皮膜の膜厚は、ほぼ均一に電着するのですが、電気めっきのため、複雑な形状のものに関しては、補助陽極を使用しなければならず、作業性の面でも黒アルマイトには劣ると言えます。
 しかし、黒アルマイトは不動態皮膜のため、静電気を帯電してしまいますが、アルミニウム上のLD被膜は導通性があるため、静電気を帯電しないという長所があります。
 さらに、LD皮膜の艶のない黒色は、黒アルマイト皮膜と比べ、反射防止性や光選択吸収性などの光的特性の他、熱吸収性においても優れております。  

硬質クロムめっき

 アルミニウム上に硬質クロムを施すことにより、耐食性はもちろんのこと、耐摩耗性、耐振動性等の機械的特性を向上させます。
 当社のアルミニウムへの硬質クロムめっきは、密着性が良好であり、微振動に強く、超音波発生装置などの耐振動性を要する部位に広く利用されております。

 硬質クロムめっきは、他の電気めっきと比較すると付き回りが悪く、均一電着性に劣るため、品物の形状に合わせた、補助陽極(付き回りの悪い部位に付きやすくさせる)、補助陰極(付き回りの良すぎる部位に付きにくくさせる)などが必要になります。
 また、皮膜には光沢がないため、通常厚付けした後、バフ研磨で表面を光輝仕上げにします(図.4中段参照)
 さらに、品物の一部分のみに硬質クロムめっきを施す場合は、めっき液や前処理、後処理での各処理液がアルミニウム素材を侵さないように、完全にマスキングする必要があります。
 以上のような理由から、アルミニウムへの硬質クロムめっきは、当社でのすべての表面処理の中で、最も技術力と時間のかかる表面処理だと言えます。
 

無電解ニッケルめっき

 無電解ニッケルは、装飾と防食、耐摩耗性というめっき皮膜の代表的な特性を備えている他、均一電着性、耐薬品性などにも優れており、幅広い用途に対応できると言えます(図.4下段参照)
 無電解ニッケルめっき皮膜は、その名の通り、電解をせずに均一に被膜が生成するため、複雑な形状の品物でも、補助陽極などを必要とせず、ニッケル皮膜でアルミニウムを全体的に被覆する事ができます。
 また、無電解ニッケルそのままの色調でも装飾性があると言えますが、その上に金やクロムなどの装飾めっきを施し、様々な色調で装飾する事が可能です。 

アルミニウムの表面処理一覧

▲当社にて可能なアルミニウムの仕上げ表面処理一覧(表.1)
◎「優良」/○「普通」/△「劣る」/×「難あり」
アルミニウムの表面処理耐食性耐摩耗性装飾性光反射
防止性
導通性膜厚
均一性
作業性
アルマイト(無色)×なし
アルマイト(黒)なし
アルマイト(赤青金)×なし
アルマイト(硬質)×なし
化成処理(アロジン)××
LD処理
硬質クロムめっき××
硬質クロム+LD処理×
無電解ニッケルめっき×
装飾クロムめっき×
金めっき×
 右の表のように、アルミニウムの表面処理には、陽極酸化(アルマイト)、化成処理、電気めっき、無電解めっきなど、それぞれ長所と短所があるので、表面処理を選択の際にはご注意下さい。
 作業性に関しては、当社内の作業環境から評価したものですので、一般的なものでは御座いません。
 作業性に難がある表面処理ほど、納期及び単価に反映していますので、ご了承下さい。  

 アルミニウムの表面処理について、ご相談、お見積等、お問い合わせの際の電話番号、ファックス番号は、Tel:042-531-1242、Fax:042-531-6734。
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