銅/ニッケル/装飾クロムめっき
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装飾用途の基本としてのめっき


銅めっき

▲銅めっき(右)と銅古美仕上げ(左)(図.1)
 銅は、導電性、熱伝導性、耐食性、ハンダ付け性、抗菌性に優れた金属です。
 鉄や、ステンレスなどの表面に銅めっきを施すことにより、導通性や、熱伝導性を向上させる事ができます。
 また、銅めっきは、付き回りが良好で、均一電着性にも優れているので、鉄素材上のめっきの下地として、広く用いられています。
 銅それ自体は、非常に耐食性に優れているので、素材を完全に銅めっき皮膜で被覆すれば、銅と同様の耐食性を得る事ができるのですが、皮膜表面から素地まで達するピンホールや、皮膜に傷を付けて素地が露出すると、素地と皮膜の電位差から局部電池が形成され、鉄素材が負極、銅皮膜が正極となって、素材の腐食が進行してしまいます。
 そのため、鉄素材の防錆目的の最終仕上げのめっきとしては、銅めっきは適しておりません。
 また、銅は変色しやすいという欠点もあります。
 銅めっきは、仕上がり直後は赤い銅色をしていますが、時間の経過とともに、表面に黒ずんだシミやムラが目立ってきます。
 そのため、装飾目的の最終仕上げのめっきとして銅めっきを用いる場合は、めっき後にクリアー塗装などを施し、変色を防止する必要があります。
 装飾用の銅めっきとして代表的なものは、銅古美仕上げです。
 銅古美仕上げと言うのは、銅めっきを厚付けした後、ある種の溶液に浸せきして黒染めした表面を、機械的研磨方法によって部分的に黒色皮膜を除去し、あたかも長い年月を経た銅製品のような色調に仕上げる方法です。(図.1左参照)
 インテリアや、家具の取っ手、ドアノブなどの装飾めっきとして、利用されております。


ニッケルめっきと装飾クロムめっき

▲各種表面仕上げの拡大図(図.2)
ニッケル3号表面クロム3号表面
ニッケル梨地表面クロム梨地表面
ニッケル1号表面クロム1号表面
 素材そのまま、梨地仕上げ、バフ仕上げの「ニッケルめっき」と「装飾クロムめっき」の表面状態の拡大図は、図.2を参照してください。
 各種の表面仕上げは、基本的に社内にて可能ですので、短納期にて処理いたします。

 俗に、素材そのままの表面状態で仕上げるめっきを「3号めっき」、バフ仕上げのめっきを「1号めっき」と言います。
 1号めっき、2号めっき、3号めっきという言い方は、昔、光沢ニッケルめっき浴というものが無い時代、素材をバフするだけでなく、中間層のめっきもバフした鏡面仕上げの装飾めっきを1号めっきと言い、素材だけバフしたものを2号めっき、バフ無しのめっきを3号めっきといって、区別していた頃の名残です。
 光沢ニッケルめっき浴が登場し、1号めっきと2号めっきの仕上がり具合の差というものが曖昧になり、2号めっきという言い方は、完全に廃れてしまいました。
 最近では、1号めっき、3号めっきという言い方もあまり使われない傾向にあるとはいえ、ニッケル3号(Ni−3)やクロム1号(Cr−1)という名前で処理依頼を承ることはしばしばあり、現場でもバフ有り無しを区別するため便宜的に使用しております。

 光の反射を防ぐため、梨地仕上げにする場合、銅や真鍮ならば素材そのものを梨地仕上げしてニッケル−クロムめっきをしますが、鉄素材の場合は、素材そのものを梨地仕上げしても、下地の銅めっきとニッケルめっきによって、荒らした表面の目が埋まってしまい、仕上がりの表面に艶が出てしまいます。
 そのため、鉄素材にあらかじめ銅めっきを比較的厚く付けた後、サンドブラストで梨地面にして、ニッケル−クロムめっきを施します。


ニッケルめっきと装飾クロムめっきの特色

▲ニッケルめっき(左)と装飾クロムめっき(右)各種(図.3)
ニッケル3号とクロム3号 ニッケル梨地とクロム梨地 ニッケル1号とクロム1号

 ニッケルめっきは、適度な装飾性、耐食性、耐摩耗性、耐薬品性をもつ金属皮膜で、作業性も良く、処理コストも比較的低いため、装飾目的や機能性の向上など、幅広い用途に対応するめっきです(図.3各写真の左側参照)。
 ニッケルは、空気中において表面に酸化皮膜を生成し腐食が進行しないので、高い耐食性を示すのですが、銅めっきと同様に、素材まで達する傷やピンホールがあると、素材と皮膜の電位差から局部腐食電池を形成してしまい、素材の腐食が進行します。
 また、環境の変化によって、白く変色しやすく、光沢がなくなってしまうという弱点があります。
 そのため、機能性の向上よりも、装飾性が重要なめっきの最終仕上げとしては、ニッケルめっきは不適切とされる場合があります。

 装飾クロムめっきは、下地めっきとしてニッケルを厚付け(10ミクロン程度)した後、0.1ミクロン程度の極薄いクロムめっき施す、装飾目的のめっきです。
 色調は、やや青みがかった銀色です(図.3各写真の右側参照)。
 当社の鉄素材上への装飾クロムめっきは、銅めっきを最下層めっきとして、中間層に光沢ニッケルめっきをし、最後に色調を整えるためのクロムめっきを施すので、皮膜は三層構造になっています。
 ちなみに、硬質クロムめっきは、下地めっきを施さず、素材に直に厚付けするクロムめっきの事で、装飾クロムめっきとは区別されます。
 色調は、装飾クロムめっきと同様ですが、硬さや耐摩耗性などの機械的性能の向上を要求される部位に使用され、主に工業用目的として用いられるので、硬質クロムめっきは工業用クロムめっきとも言います。

 装飾クロムめっきの最上層のクロムめっき皮膜は、0.1ミクロン程度と非常に薄いので、装飾クロムめっきを施しても下地のニッケルめっき以上の硬さや耐摩耗性を得ることはできません。
 しかし、クロム金属は空気中の酸素と結合し、表面に緻密な酸化皮膜を生成するため、耐食性に優れ、下層の銅−ニッケル皮膜を腐食から防ぎます。
 また、クロムの酸化皮膜は、破壊されても速やかに空気中の酸素と結合して再生するので、変色しにくいという特徴があります。
 青みがかった銀色の色調のクロムめっきは、単にその装飾性だけでなく、ニッケルめっきの変色防止としての役割もあるのです。

 クロムめっきは、高機能な特徴を持つかわりに、付き回りが非常に悪いという欠点があります。
 図.3のクロム3号とクロム1号の写真をよく見て頂ければ解ると思いますが、L型アングルの内側角部分には、クロム皮膜が十分にのっておらず、下地のニッケル皮膜の色が透けて見えています。
 これは、電解液中のクロムイオンが、電流密度の低い部位まで回らず、クロム金属が還元析出していないからです。
 このような、凹んだ部分へ、均一にクロム皮膜を電着させるには、補助陽極を用い、凹んだ部分の電流密度を上げる必要があります。
 有効面が凹んだ部分であったり、複雑な形状をした製品に均一に装飾クロムめっきを施すには、その製品に適した補助陽極を作成しなければなりません。
 また、クロムめっきは、銅やニッケル、亜鉛などと違い、付き回りが悪いので、バレルめっきが非常に難しいという欠点も有ります。
 そのため、当社では、どんな小さなものでも、一つ一つジグに引っかけております。
 以上のような理由から、装飾クロムめっきは、他のめっき処理と比較して、作業性の面で劣ると言えます(表.1参照)。


▲銅/ニッケル/装飾クロムの特徴一覧(表.1)
◎「優良」/○「普通」/△「劣る」/×「難あり」
めっき種耐食性装飾性耐摩耗性膜厚
均一性
耐変色性導通性作業性
銅めっき×
ニッケルめっき
装飾クロムめっき×


当社にて処理可能な大きさ、重量等

 当社の銅/ニッケル/装飾クロムめっきは、すべて手作業にて行っておりますので、お客様のニーズにきめ細かく対応いたします。
 当社にて処理可能な品物の大きさや重量等は、表.2を参照してください。

▼処理可能な大きさ(表.2)
めっき種処理槽大きさ(mm)
横幅×縦×深さ
最大重量(Kg)バレルめっき適応素材
銅めっき1500×800×800〜100Kg可能 鉄、銅、真鍮、ステンレスに適応。
アルミは難素材ですが、処理可能です。
ニッケルめっき1500×800×800
1000×800×800
〜100Kg可能
装飾クロムめっき500×500×600〜50Kg不可

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