(3.116) |
焼入れ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
quenching | ||||||
鉄鋼製品を静止空気中よりもより迅速に冷却することからなる操作。
| ||||||
(3.114) |
焼入硬化 | |||||
quench hardening | ||||||
オーステナイト化後、マルテンサイト又はベイナイトに変態するような条件下での冷却によって得られる鉄鋼製品の硬化。 | ||||||
水焼入れ | ||||||
water hardening , water quenching | ||||||
冷却に水を用いて行う焼入れ。 | ||||||
油焼入れ | ||||||
oil hardening , oil quenching | ||||||
冷却に油を用いて行う焼入れ。 | ||||||
熱浴焼入れ | ||||||
hot bath quenching | ||||||
冷却に適切な温度に保った熱浴(溶融金属、溶融塩、油など)を用い、この熱浴で急冷し適切な時間保持した後、引き上げて空冷する焼入れ。 | ||||||
塩浴焼入れ | ||||||
salt bath quenching | ||||||
溶融塩を用いる熱浴焼入れ。 | ||||||
電解焼入れ | ||||||
electrolytic hardening | ||||||
電解液中で陰極とした処理物と陽極との間で通電して処理物を加熱し、電解液によって急冷する焼入れ。 | ||||||
真空焼入れ | ||||||
vacuum hardening | ||||||
真空中で加熱し、ガス、油又は水などによって急冷する焼入れ。 | ||||||
空気焼入れ | ||||||
air hardening | ||||||
空気中又は適切なガス雰囲気中で冷却する焼入れ。
| ||||||
噴射焼入れ | ||||||
spray hardening | ||||||
冷却剤を噴射して行う焼入れ。 | ||||||
噴霧焼入れ | ||||||
fog hardening | ||||||
霧状の冷却液中で行う焼入れ。 | ||||||
(3.89) |
中断焼入れ | |||||
interrupted quenching | ||||||
媒体中で急冷し、鉄鋼製品が焼入媒体との熱的平衡に達する前に中断する焼入れ。
| ||||||
(3.136) |
階段焼入れ | |||||
step quenching | ||||||
適切な温度において媒体中で灼熱することによって一時的に冷却が中断される焼入れ。
| ||||||
時間焼入れ | ||||||
time quenching | ||||||
冷却剤中で急冷して適切な時間保持した後、引き上げる方法による中断焼入れ。 | ||||||
プレスクエンチ | ||||||
press quenching | ||||||
プレスした状態で行う焼入れ。
| ||||||
部分焼入れ | ||||||
selective hardening | ||||||
部品の各部に所要の性質を与えるために、局部的に行う焼入れ。 | ||||||
ベイナイト焼入れ | ||||||
beinitic hardening | ||||||
ベイナイト組織を得るような焼入れ。 | ||||||
スラッククエンチ | ||||||
slack quenching | ||||||
オーステナイト化温度から臨界冷却速度よりやや遅い速度で冷却して行う焼入れ。
| ||||||
鍛造焼入れ | ||||||
direct quenching from forging temperature | ||||||
オーステナイト状態で鍛造を施し、そのまま直ちに行う焼入れ。
| ||||||
(3.97) |
マルテンパ | |||||
martempering | ||||||
オーステナイト化後、階段焼入れを行う熱処理。この階段焼入れは、Ms点の真上の温度にフェライト、パーライト又はベイナイトの生成を避けるのに十分な速度で焼入れ後、均一な温度に、しかも、ベイナイトの生成を避ける上で十分に短い時間保持する熱処理。
| ||||||
(3.140) |
サブゼロ処理 | |||||
sub-zero treating , deep freezing | ||||||
焼入れ後、残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させるために行う熱処理で、常温よりも低い温度へ冷却し、その温度で灼熱する熱処理。
| ||||||
(3.5) |
オーステンパ | |||||
austempering | ||||||
オーステナイト化後、フェライトやパーライトの形成を避けるように十分早くMs点より高い温度に冷却する階段焼入れを行い、オーステナイトのベイナイトへの変態が部分的又は完全に起こるように灼熱する熱処理。
| ||||||
(3.108) |
パテンチング | |||||
patenting | ||||||
オーステナイト化後、引き続いて行われる線引き又は圧延に適した組織を得るために、適切な条件下で冷却する熱処理。
| ||||||
オイルテンパ処理 | ||||||
oil quenching (hardening) and tempering | ||||||
鋼線を連続的に真っすぐな状態で、油など冷媒で焼入れ後、焼戻しを行う処理。 | ||||||
(3.144) |
焼戻し | |||||
tampering | ||||||
一般に焼入硬化後、又は所要の性質を得るための熱処理後に、特定の温度(Ac1未満)で、1回以上の回数灼熱した後、適切な速度で冷却することからなる熱処理。
| ||||||
繰返し焼戻し | ||||||
multiple tempering | ||||||
高合金鋼、高速度工具鋼などのように、1回の焼戻しで効果が十分上がらない場合に、焼戻しを2〜3回繰り返す操作。 | ||||||
調質 | ||||||
thermal refining | ||||||
焼入れ後、比較的高い温度(400℃以上)に焼戻して、トルースタイト又はソルバイト組織にする操作。 | ||||||
(4.2) |
時効 | |||||
ageing | ||||||
急冷、冷間加工などの後、時間の経過に伴い鋼の性質(例えば、硬さなど)が変化する現象。
| ||||||
焼入時効 | ||||||
quench ageing | ||||||
高温から急冷した鉄鋼を室温又はそれより少し高い温度に保持したときに起こる時効。 | ||||||
ひずみ時効 | ||||||
strain ageing | ||||||
冷間加工した材料に起こる時効。 | ||||||
過時効 | ||||||
overageing | ||||||
硬さ、強さなどの性質が最高になる温度と時間よりも高い温度又は長い時間で起こる時効。 | ||||||
(3.129) |
固溶化熱処理 | |||||
solution treatment | ||||||
析出物を固溶体中に溶け込ませるための熱処理。 | ||||||
過冷 | ||||||
supercooling | ||||||
変態や析出の一部又は全部を阻止して、変態点以下又は溶解度線以下の温度に冷却する操作。 | ||||||
水じん(靱) | ||||||
water toughening | ||||||
高マンガン鋼などを固溶化温度から水中急冷して完全なオーステナイト組織を得る操作。 | ||||||
(4.47) |
鋭敏化 | |||||
sensitization | ||||||
粒界への炭化物の析出による、粒界腐食に対するステンレス鋼の感受性の増加。
| ||||||
鋭敏化熱処理 | ||||||
オーステナイト系ステンレス鋼の粒界腐食試験を行うために、500〜800℃の温度範囲に加熱して、粒界腐食に鋭敏な組織状態にする熱処理。 | ||||||
オースエージ | ||||||
ausageing | ||||||
過冷オーステナイトをMs点以上の温度で時効する処理。
| ||||||
(3.96) |
マルエージ | |||||
marageing | ||||||
鋼に要求される機械的性質を与える目的で、非常に低い炭素含有量のため軟らかいマルテンサイトを生じる鋼に対して、固溶化熱処理に引き続いて行われる析出硬化処理。 | ||||||
(3.14) |
ブルーイング | |||||
blueing | ||||||
鉄鋼製品を、酸化媒体中で、その研磨した表面が青色の酸化物の薄い、連続的な、密着性の高い膜で覆われるような温度で処理する操作。 | ||||||
(3.72) |
焼入性 | |||||
hardenability | ||||||
鋼がマルテンサイト又はベイナイトなどへ変態しやすいことによって焼入硬化が得やすいことを表す性質。
| ||||||
焼入性バンド | ||||||
hardenability band | ||||||
同一の鋼種の化学成分及び結晶粒度のばらつきによる焼入性曲線のばらつきの範囲をバンドで表したもの。
| ||||||
焼入性倍数 | ||||||
multiplying factor | ||||||
合金元素を添加したときの理想臨界直径と、添加しないときの理想臨界直径との比。
| ||||||
(4.36) |
質量効果 | |||||
mass effect | ||||||
質量及び断面寸法の大小で、焼入硬化層深さの異なる度合い。 質量及び断面寸法のわすかな変化で、焼入硬化層深さが大きく変化することを、質量効果が大きいという。
| ||||||
自硬性 | ||||||
property of self hardening | ||||||
焼入温度から空気中で冷却する程度でも、容易にマルテンサイトを生じて硬化する性質。 | ||||||
(3.117) |
冷却能 | |||||
cooling power , quenching capacity | ||||||
焼入れに用いる冷却剤の冷却能力。
| ||||||
(3.41) |
臨界冷却関数 | |||||
critical cooling function | ||||||
好ましくない組織の現れることを避けて、所定の変態を十分完了させるのに必要な最低の冷却条件に対応する冷却関数。
| ||||||
(3.42) |
臨界冷却速度 | |||||
critical cooling rate | ||||||
臨界冷却関数に対応するマルテンサイト変態を生じるのに必要な最小の冷却速度。
| ||||||
(4.14) |
臨界直径 | |||||
critical diameter | ||||||
与えられた条件下での焼入れによって、その中心部において50%マルテンサイト組織を持つ長さ3d(dは直径)以上の丸棒の直径。
| ||||||
理想臨界直径 | ||||||
ideal critical diameter | ||||||
理想焼入れ(焼入剤の冷却能を無限大と仮定した場合の焼入れ)したときの臨界直径。
| ||||||
等温変態 | ||||||
isothermal transformation | ||||||
鉄鋼をオーステナイト状態から変態温度以下の任意の温度まで急冷し、その温度に保持した場合に生じる変態。 | ||||||
(3.151) |
等温変態曲線 | |||||
isothermal transformation dagram , time temperature transformation diagram | ||||||
各温度におけるオーステナイトの等温変態の開始及び終了を図示した一群の曲線。縦軸に温度、横軸に時間(対数目盛)をとって表す。
| ||||||
(3.32) |
連続冷却変態曲線 | |||||
continuous cooling transformation diagram | ||||||
任意の冷却関数で連続的に冷却した場合に生じるオーステナイトの変態の開始及び終了を図示した一群の曲線。縦軸に温度、横軸に時間(対数目盛)をとって表す。
| ||||||
オーステナイトの安定化 | ||||||
stabilization of austenite | ||||||
固溶原子の分配などによってオーステナイトが安定化されて、マルテンサイトへの変態が起こりにくくなる現象。
| ||||||
残留応力 | ||||||
residual stress | ||||||
外力又は熱こう配がない状態で、金属内部に残っている応力。
| ||||||
焼入応力 | ||||||
quenching stress | ||||||
焼入れで生じる残留応力。
| ||||||
焼入変形 | ||||||
quenching distortion | ||||||
焼入れによって生じる形状又は寸法の変化。 | ||||||
焼割れ | ||||||
quenching crack | ||||||
焼入れ応力によって生じる割れ。 | ||||||
置割れ | ||||||
season cracking | ||||||
焼入れ又は焼入焼戻しした鉄鋼が放置中に生じる割れ。 自然割れともいう。 | ||||||
軟点 | ||||||
soft spot | ||||||
焼入れで局部的に生じる完全には焼入硬化しない部分。 | ||||||
焼戻硬化 | ||||||
temper hardening | ||||||
焼戻しで硬化する現象。 | ||||||
(3.121) |
二次硬化 | |||||
secondary hardening | ||||||
焼入硬化後に加えられた一つ以上の焼戻処理によって得られる鉄鋼製品の硬化。
| ||||||
(3.143) |
焼戻ぜい性 | |||||
temper brittleness | ||||||
特定の温度で灼熱、又はこれらの温度を徐冷するとき、特定の焼入焼戻鋼に影響を及ぼすぜい性。
| ||||||
焼戻割れ | ||||||
tempering crack | ||||||
焼入れした鉄鋼を焼戻しする際、急熱、急冷又は組織変化のために生じる割れ。 | ||||||
テンパカラー | ||||||
temper colour | ||||||
焼戻しの際に鉄鋼の表面に現れる酸化膜の色。 | ||||||
時効硬化 | ||||||
age hardening | ||||||
急冷又は冷間加工した鉄鋼が時効によって硬化する現象。 | ||||||
(3.110) |
析出硬化 | |||||
precipitation hardening | ||||||
過飽和固溶体からの1種以上の化合物の析出による鉄鋼製品の硬化。 | ||||||
復元 | ||||||
reversion | ||||||
時効硬化した後に、時効温度よりもやや高い温度に短時間加熱することによって、ほぼ時効前の性質に戻り、軟化する現象。 | ||||||
準安定オーステナイト | ||||||
metastable austenite | ||||||
平衡状態図によって定義される状態とは異なる見掛け上安定な状態にあるオーステナイト。オーステナイトが安定である温度範囲より低い温度で未変態のまま非平衡に存在する過冷却オーステナイトを指す。 | ||||||
(4.45) |
残留オーステナイト | |||||
retained austenite | ||||||
焼入硬化後、常温において残留する未変態オーステナイト。 | ||||||
(4.35) |
マルテンサイト | |||||
martensite | ||||||
元のオーステナイトと同じ化学組成をもつ体心正方晶又は体心立方晶の準安定固溶体(α'又はαMと略記)。
| ||||||
焼戻マルテンサイト | ||||||
tempered martensite | ||||||
マルテンサイトの焼戻組織の総称。狭義には焼戻しの第三段階直前(約250℃)まで焼戻しされたマルテンサイト組織。 | ||||||
トルースタイト | ||||||
troostite | ||||||
マルテンサイトを焼戻ししたときに生じる組織で、光学顕微鏡では識別できないほどの微細なフェライトとセメンタイトからなる組織(焼戻トルースタイト)。又は、焼入の際に600℃以下の温度で生成した微細パーライト組織(焼入トルースタイト)。
| ||||||
ソルバイト | ||||||
sorbite | ||||||
マルテンサイトをやや高い温度に焼戻しして粒状に析出成長したセメンタイトとフェライトの混合組織で、セメンタイト粒子が約400倍の光学顕微鏡下で認められる組織(焼戻トルースタイト)。又は、焼入れの際に600〜650℃以下の温度で生成した微細パーライト組織(焼入ソルバイト)。
| ||||||
(4.8) |
ベイナイト | |||||
bainite | ||||||
パーライトが形成される温度と、マルテンサイトが形成され始める温度との間の温度間隔で起こるオーステナイトの分解によって形成される準安定構成物で、炭素がセメンタイトの形を取って微細に析出しているフェライトからなる。
| ||||||
過飽和固溶体 | ||||||
supersatureted solid solution | ||||||
その温度での平衡溶解度以上に溶質を固溶している固溶体。
| ||||||
焼入性曲線 | ||||||
hardenability curve , Jominy curve | ||||||
焼入性試験方法(一端焼入方法)で求めた水冷端からの距離と硬さとの関係を示す曲線。
| ||||||
U曲線 | ||||||
U curve | ||||||
鉄鋼の円板状試料を作り、これを焼入して横断面の硬さの分布を表面からの距離に対して表すときに得られるU字状の曲線。 |