d)表面硬化処理及び表面処理

4101
(3.142)
表面硬化処理
surface-hardening treatment
 表面加熱後の焼入硬化処理。
備考浸炭焼入、窒化、高周波焼入れ、炎焼入れなどがある。
4102
(3.85)
高周波焼入れ
induction hardening
 加熱が誘導によって行われる表面硬化処理。
備考主に鉄鋼の任意の表面又は部分を焼入れする場合に用いる。鉄鋼の高周波焼入焼戻加工は、JIS B 6912に規定されている。
4103
(3.65)
炎焼入れ
flame hardening
 熱源が炎である表面硬化処理。
備考主に鉄鋼の任意の表面を焼入れする場合に用いる。
4104
(3.26)
浸炭
carburizing
 オーステナイト中に固溶している状態の炭素を、表面に富化させるために鉄鋼製品にオーステナイト状態で適用される熱化学処理。
備考1.浸炭した鋼は、焼入焼戻しを行って使用することが普通である。この処理を肌焼き(case hardening)ということもある。
2.浸炭剤の種類によって固体浸炭、液体浸炭及びガス浸炭に分けられる。
4105 エンリッチガス
enriched gas
 浸炭性雰囲気のカーボンポテンシャルを増加させるために添加する炭化水素などのガス。
4106
(3.22)
カーボンポテンシャル
carbon potential
 鋼を加熱する雰囲気の浸炭能力を示す用語。その温度で、そのガス雰囲気と平衡に達したときの鋼の表面の炭素濃度で表す。
備考ISOの定義では、規定された条件下、対象の浸炭剤と平衡にある純鉄試験片表面における炭素含量。
4107 露点
dew point
 雰囲気中の水分が凝縮し始める温度。
備考ガス浸炭の場合は、露点でカーボンポテンシャルを調節できる。
4108 真空ガス浸炭
vacuum carburizing
 真空中で処理物を加熱し、浸炭性ガスを導入して行う浸炭。
4109 プラズマ浸炭
plasma carburizing
 媒体がプラズマである浸炭。
4110 電解浸炭
electrolytic carburizing
 塩浴中で、陰極とした処理物と陽極との間に通電し、処理物を加熱して行う浸炭。
4111 緩和浸炭
mild carburizing
 過剰浸炭を防止するために浸炭性の弱い浸炭剤中で行う浸炭。
4112
(3.24)
復炭
carbon restoration
 以前の処理によって脱炭した表面の炭素含量を回復するための熱化学処理。
4113
(3.25)
浸炭窒化
carbonitriding
 オーステナイトでは固溶状態にある炭素及び窒素の表面に増加させるために、Ac1を超える温度に鉄鋼製品を加熱する熱化学処理。
備考1.一般に、この操作はその後直ちに焼入硬化を伴う。
2.処理方法には、浸炭性ガスにアンモニアを添加して行うガス浸炭窒化などがある。
3.浸炭浸窒ともいう。
4114
(3.110)
窒化
nitriding
 窒素の表面富化を生じるように鉄鋼製品に適用される熱化学処理。
備考1.窒化の行われる媒体を規定すること、例えば、気体、プラズマなど。
2.処理方法には、アンモニア分解ガスによるガス窒化及び青酸塩による液体窒化がある。
4115 真空ガス窒化
vacuum nitriding
 真空中で処理物を加熱し、窒化性ガスを導入して行う窒化。
4116
(3.101)
炭窒化
nitrocarburizing
 窒素及び炭素を表面富化させ、ひいては化合物層を作らせるために鉄鋼製品に適用される熱化学処理。
備考1.この化合物層の下には窒素の富化した拡散域が存在する。
2.炭窒化の行われる媒体は、指定されなければならない。
例えば、塩浴、ガス、プラズマなど。
3.耐摩耗性、耐疲れ性などを向上させる。
4.軟窒化ともいう。
4117
(3.109)
プラズマ窒化
plasma nitriding
 媒体がプラズマである窒化。
備考減圧した窒化性ガス雰囲気中で、陰極とした処理物と陽極との間に生じるグロー放電を使用する。
4118 真空ガス浸炭窒化
vacuum carbonitriding
 真空中で処理物を加熱し、浸炭性及び窒化性ガスを導入して行う浸炭窒化。
4119 プラズマ浸炭窒化
plasma carbonitridingp
 媒体がプラズマである浸炭窒化。
備考減圧した浸炭性及び窒化性ガス雰囲気中で、陰極とした処理物と陽極との間に生じるグロー放電を使用する。
4120
(3.55)
直接焼入れ
direct quenching
 熱間圧延、成形又は熱化学処理に引き続いて直ちに行われる焼入れ。
4121 一次焼入れ
primary quenching
 浸炭した鋼の心(core)部の組織を微細化する目的で、心(core)部のAc3点以上の適切な温度に加熱して行う焼入れ。
4122 二次焼入れ
secondary quenching
 浸炭した鋼の浸炭層を硬化する目的で、一次焼入れ後浸炭層のAc1点以上の適切な温度に加熱して行う焼入れ。
4123
(3.29)
セメンテイション
cementation
 金属材料の表面層の硬さ又は耐熱耐食性などを向上させるために、高温度の各種媒剤中で、他の元素を表面に拡散させる操作。
備考拡散浸透処理ともいう。
参考ISOの定義では、金属元素又はメタロイドを鉄鋼製品に導入しようとする熱化学処理。
4124
(3.2)
アルミナイジング
aluminizing
 表面にアルミニウムを富化させる目的で、鉄鋼製品に適用される熱化学処理。
備考鉄鋼の耐熱性及び耐食性を向上させる。フェロアルミニウム等の粉末による方法をカロライジング(calorizing)ともいう。
4125 ガルバナイジング
galvanizing
 鉄鋼の耐食性を向上させるために、溶融亜鉛浴に浸せきして表面を亜鉛で被覆する操作。
備考硫酸塩浴中において電気めっきで亜鉛を被覆する場合もある。
4126
(3.141)
サルファライジング
sulfurizing
 硫黄を鉄鋼の表面に拡散させる操作。
備考浸硫ともいう。
参考ISOの定義では、化合物層に硫黄を自発的に添加した炭窒化。
4127
(3.30)
クロマライジング
chromizing
 クロムの表面富化を得るために、鉄鋼製品に適用される熱化学処理。
備考1.表面層は実際上、純クロム(低炭素鋼については)又はクロム炭化物(高炭素鋼については)からなる。
2.鉄鋼の耐熱性及び耐食性を向上させる。
4128
(3.124)
シリコナイジング
siliconizing
 けい素の表面富化を得るために鉄鋼製品に加えられる熱化学処理。
備考耐食性皮膜を作る。浸けいともいう。
4129
(3.123)
シェラダイジング
sherardizing
 亜鉛の表面富化を得るために鉄鋼製品に加えられる熱化学処理。
備考耐食性皮膜を作る。
4130
(3.16)
ボロナイジング
boronizing
 鉄鋼製品にほう化物の表面層を生成させることを目的として行われる熱化学処理。
備考1.例えば、パックほう化、ペイストほう化などほう化が行われる媒体を規定することが望ましい。
2.耐摩耗性皮膜を作る。ほう化ともいう。
4131 炭化物被覆処理
carbide coating
 鋼の耐摩耗性などを向上させるために、その表面に炭化物皮膜を生じさせる処理。
備考処理方法には、金属粉末や合金粉末を添加した溶融塩中に浸せきして生じさせる溶融塩法、金属ハロゲン化物などの混合ガスの高温における化学反応によって生じさせる化学蒸着法及び放電中における蒸発金属の反応と衝撃的な蒸着によって生じさせるイオンプレーティング法などがある。
4132
(3.135)
水蒸気処理
steam treatment
 水蒸気で加熱して、表面に四三酸化鉄を生じさせる処理。
備考潤滑能力を高めることを目的とする。
参考ISOの定義では、過熱水蒸気中で行われるブルーイング。
4201
(3.105)
過浸炭
overcarburizing
 表面の炭素量が規定の水準を超える浸炭。
備考英語ではこの用語は、また過剰な硬化層深さを表す。
過剰浸炭
excess carburizing
浸炭層の炭素量が目標値以上になる現象。
4301
(3.48)
焼入硬化層深さ
depth of hardening
 焼入れで硬化する深さ。
備考高周波焼入れ又は炎焼入れによって硬化する深さについては、有効硬化層深さ及び全硬化層深さがJIS G 0559に規定されている。
参考ISOの定義では、鉄鋼製品の表面と焼入硬化の及ぶ範囲を特徴づける限界との距離。
4302 浸炭硬化層深さ
carburized case depth
 鋼を浸炭し、焼入焼戻しによって硬化した浸炭層の深さ。
備考有効硬化層深さ及び全硬化層深さがJIS G 0557に規定されている。