g)性質・欠陥

     
701
陽極酸化皮膜構造
structure of anodic oxide coating
模式図に示す陽極酸化皮膜の構造。

模式図

702
皮膜セル
oxide cell
陽極酸化皮膜を形成する一つ一つの微細孔をもつセル(701 模式図参照)。
703
微細孔
pore,
micropore
皮膜セルの中心に形成された微細な孔。電流の通り道(701 模式図参照)。
704
多孔質層
porous layer
(701 模式図参照)
705
バリヤー層
barrier layer
陽極酸化皮膜の溶解能力のない電解質によるか、又は溶解能力のある電解質でも多孔質層の底にできる無孔性の絶縁薄層。
706
ベーマイト
boehmite
一水和アルミニウム酸化物。約80℃以上の温度で陽極酸化皮膜を水和封孔処理したときに生成する。
707
バイヤライト
bayerite
三水和アルミニウム酸化物。約80℃以下の温度で陽極酸化皮膜の水和封孔処理したときに生成する。
708
皮膜厚さ
coating thickness,
film thickness
陽極酸化皮膜の厚さ。
709
測定点皮膜厚さ
local thickness
一か所の測定点の皮膜厚さ。
710
最低皮膜厚さ
minimum local thickness
測定した数か所の測定点皮膜厚さの最低値。
711
平均皮膜厚さ
average thickness
測定した数か所の測定点皮膜厚さの平均値。
712
ビルドアップ
build-up
陽極酸化処理に伴う寸法の増加。
713
表面粗さ
surface roughness
小さい間隔で起きる表面の凹凸の程度。
714
皮膜均一性
uniformity of film
陽極酸化皮膜の厚さの均一性。
715
皮膜見掛け密度
apparent density of film
多孔質皮膜の場合、微細孔まで含んだ平均的皮膜の密度。電解浴、電解条件及び合金の種類によって異なる。
716
皮膜質量
coating mass
陽極酸化皮膜の質量。通常、単位面積あたりの質量で表す。
717
陽極酸化皮膜の熟成
ageing
陽極酸化処理後、一定期間を経過することによって、皮膜の性質が安定化する現象。エイジングともいう。
718
ダイマーク
die mark
押出(引抜)材表面の押出(引抜)方向に現れる線状の細かい凹凸。
719
みみずしみ
deep-seated stain
重ねた板の間にできる、みみずがはったようなしみ。
720
油焼け
oil stain
圧延油又は潤滑油の不完全燃焼によって材料の表面に生じた変色。
721
触はん
finger mark
素材の取扱い中に付着した指紋などの跡。
722
バフむら
buff-patched appearance
だれ、磨き目のふぞろいなどのバフ研磨のむら。
723
バフ焼け
buff-burned pattern
バフ研磨中の高熱のために生じた研磨面の不均一のこと。
724
皮膜焼け
burning of anodic oxide coating
陽極酸化処理時に電流分布の不均一、電流密度の過大などによって生じた、焼けたような外観。
725
アルマイト模様
streak
陽極酸化処理によって現れるしま状、松葉状などの模様。金属組織ほかの不均一に起因する。
726
皮膜割れ
cracking of anodic oxide coating,
crazing of anodic oxide coating,
stress cracking
加熱、変形などによる皮膜の割れ。
727
黒はん
black spot,
spotting out
陽極酸化処理したときに現れる灰黒色状のまだら模様。この黒はん部分には主にけい素が偏析している。
728
皮きず
sliver
素材中の異物(ガスを含む。)又はきずのために材料の表面が皮を被ったようになったもの、及びこの皮がはがれたもの。
729
コーナー欠陥
corner defect
品物の鋭い角度の部分にできる陽極酸化皮膜の欠陥。
730
すりきず
scratch
取扱中に表面にできた連続又は断続した線状のきず。
731
ガスだまり
defect of gas accumulation
電解中に品物内部にガスがたまり、陽極酸化皮膜がむらになった部分。
732
粉ふき
blooming
電解不良によって、陽極酸化皮膜の表面に粉状物質を生成する現象。
733
シーリングスマット
sealing smut
陽極酸化皮膜の封孔処理後に生じる粉状物質。
734
ブルーム
weathering bloom
環境因子(大気汚染、光など)によって引き起こされた、陽極酸化皮膜の白化現象。簡単にふき取ることはできない。
735
イリデッセンス
iridescence
陽極酸化皮膜を大気中に暴露した場合、短期間で表層が劣化し、にじ(虹)色に見える現象。干渉色ともいう。
736
流れ
slobbery stain
すきまに残っていた各種処理液が電解後に流れ出し、表面にできたよだれ状の模様。たれともいう。
737
色流れ
dye bleeding
染色皮膜の染料が、水洗及び封孔処理中に溶出し、脱色する現象。なき出しともいう。
738
色むら
irregular colour
仕上がりの色調が品物の部分で異なる外観。
739
色あせ
colour fade-out,
fading
着色した陽極酸化皮膜が光、熱、薬品などによって色が失われる現象。
740
光沢むら
uneven brightness
皮膜の光沢の不均一。
741
光沢保持率
gloss retention
光沢度変化の前後の割合。
742
つきまわり性
throwing power electrolytic colouring
電解着色における均一着色性。
743
スポーリング
spalling
chipping
陽極酸化皮膜の密着性が局部的に失われて、はく離を伴う現象。
744
チョーキング
chalking,
powdering
表面が粉末状になる現象。主として光による劣化が原因である。白亜化ともいう。
745
ゆず肌
orange peel
ゆずの実の表皮のような小さなくぼみのある塗膜の外観。オレンジピールともいう。
746
付着性
adhesive property
塗膜が下地面に付着して離れにくい性質。
747
局部腐食
local corrosion
局部的に集中して起こる腐食。
748
孔食
pitting corrosion
局部腐食が金属内部に向かって孔状に進行する腐食。
749
点食
pitting corrosion
比較的軽度の孔食で点状を示すもの。
750
糸状腐食
filiform corrosion
重ねた板の間又は、塗膜の下に生じる糸状の腐食。
751
接触腐食
galvanic corrosion
異種金属が接触し、電解質が介在して電気回路が形成したときに生じる腐食。
752
耐候性
weather resistance,
weather-fastness
自然条件の影響を受けて、時間の経過に伴って起こる材料の物理的及び化学的変化に耐える性質。
753
耐食性
corrosion resistance
腐食性物質を含む環境にさらされたときに耐える性質。アルカリ耐食性、酸耐食性、塩水耐食性などがある。
754
耐磨耗性
abrasion resistance,
wear resistance
摩耗負荷に対する表面の抵抗性。しゅう動摩耗と衝突摩耗がある。
755
耐汚染性
stain resistance
汚れに対する抵抗性。封孔の程度で表す。
756
写像性
image clarity
陽極酸化皮膜表面に像を写したときの像の鮮明さ又はゆがみの程度を表す皮膜表面の性質
757
光輝性
brightness
光を鏡面反射する表面の特性。
758
色堅ろう性
colour fastness
光、熱、雨水などに対する色の耐久性。
759
光堅ろう性
light fastness
長期の光暴露に対する着色表面の耐久性。
760
絶縁耐力
dielectric strength
皮膜の電圧に耐える能力で、絶縁破壊電圧、絶縁破壊の強さ、耐電圧などで表される。
761
絶縁破壊電圧
breakdown voltage
定められた方法で皮膜に電圧を加えたときに皮膜が破壊される最小の電圧。
762
ロスファクター
loss factor,
dissipation factor
インピーダンスの抵抗成分と容量成分の比。皮膜の封孔度を表すときに用いる。